第7章 不在の証明
*
予定どおり、私は教会を抜け出した。
昼を越えた頃、クラボフスキさんには「古い巡礼地に祈りに行く」とだけ伝え、荷物も持たず、馬も使わず、ただひとりで回廊を抜けた。少し離れた森の小道へ入ると、そこからは一気に歩調を速める。
ジルさんが指示通りに動いたのなら、三日もあれば十分に約束の宿舎へ辿り着けるはずだった。
そして、私は六日目にその小さな石造りの宿舎に到着した。
だが――彼女はいなかった。
宿の主は、小柄で口の悪い老女だった。客の顔と名はすべて記憶しているという。私は「数日前に若い女が来なかったか」と尋ねたが、首を横に振られた。
「そんな女は泊まってないよ。薬草の匂いがする? そりゃ覚えてるさ。でも、来てないね」
記録にもなかった。そこに彼女の名も、旅装の影も残っていなかった。
私は宿舎の片隅の部屋を借り、その晩をそこで過ごした。
窓の外には、遠くで雷が鳴っていた。低く、くぐもった音。湿った夜気の中、私はろうそくを灯して地図を睨んだ。ありうる迷い道を洗い直し、分岐のすべてを思い返し、彼女が立ち寄りそうな場所を一つずつ心の中でたどっていった。
彼女は方向音痴だ。遅れているだけかもしれない。夜を避けたのかもしれない。あるいは……私の言葉を信じられなくなったのか。
一晩中、私は耳を澄ませていた。扉が叩かれる音を待った。
だが、誰も来なかった。