第7章 不在の証明
「わかりました。行きます。でも……三日目にあなたが来なかったら?」
「来る。必ず」
「もし……来られない理由があったら?」
「そのときは、その宿舎の鍵を開けたままにしておいてください。誰かが気づくだろう。次の合図を残す」
沈黙が落ちた。
それでも彼女は怯えなかった。ただ、深く、真剣に私の言葉を受け止めていた。
「……準備します。今夜ですね」
「最小限の荷物だけで。余計な荷物は疑いを生む。あとは――」
私は彼女の額に手を当て、目を細めた。
「方向音痴の癖が出ないことを、祈っておきます」
「それだけは……神頼みですね」
その夜が訪れるまで、私は椅子の背にもたれながら、地図を握りしめていた。