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軌道逸脱と感情の干渉について【チ。/バデーニ】

第7章 不在の証明



 彼の口調には、聖職者というより追跡者の苛立ちと怒りが混じっていた。 
 ジルさんが彼らの誇りと権威にどれほどの傷をつけたのか、言葉にしなくても理解できるほどだった。修道院という閉鎖された共同体において、個人の意志によって聖性が破られたことは、彼らの中では許しがたい背信なのだ。

「申し訳ありませんが、記憶にありません。そのような人物に、心当たりはないですね」

 感情が表に出ないよう、努めて平坦に言った。
 修道士は巻紙を丸めると、さらに詰め寄ってきた。

「我々の報告によれば、その女は現在、この村の教会に身を寄せているとか」

 私は一拍、間を置いてから答えた。

「ご苦労なことです。ですが、そのような人物に私が心当たりを持つと思われる根拠は?」
「記録が示しています。あなたの診療記録です。彼女は幾度となくあなたの看護にあたっていた。そして――」

 彼は、声を潜めながら続けた。

「村人の証言があります。“薬草に詳しい女”が最近この教会に現れ、助祭と暮らしていると」 
「……ああ、それはミラのことでしょう」
「ミラ?」

 私は間を置いて応じた。

「私が雇ったメイドです。農村出の娘で、識字は乏しいが薬草の扱いに長けている。修道院の話は彼女から聞いたこともありません。まったくの別人です」

 修道士は目を細めた。
 
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