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軌道逸脱と感情の干渉について【チ。/バデーニ】

第7章 不在の証明



 彼女から返事をもらった、その日の昼下がり。
 教会前庭は、初夏の陽光に包まれ、静まりかえっていた。
 ジルさん――いや、「ミラ」は、町の市へ薬草と乾物を買いに出かけていた。私はいつものように、巡回後の短い休息として、回廊をゆるやかに歩いていた。

 その時だった。
 門の方から数人の男たちが歩いてくるのが見えた。
 粗末な旅装に身を包んでいたが、その中に、ただ一人、明らかに修道士の服を着た男がいた。暗い法衣の裾から、しっかりと磨かれたブーツが覗いている。彼らの歩き方には、田舎者とは違う、目的を持った都市の人間の動きがあった。

 男たちは教会の敷地に入ってくると、何気ないふりをしてクラボフスキさんに話しかけた。だが、私の姿を見るなり、修道士がまっすぐこちらへ向かってきた。

「失礼ですが、あなたがバデーニ副助祭でいらっしゃいますね」
「はい。何か問題でも?」

 修道士は手にした巻紙を掲げた。そこには、中央修道院の紋章とともに、公印が捺されていた。

「我々は中央修道院から派遣されました。ここに記された者を探しています。彼女は修道誓願を破り、無断で修道院を離脱した。また、院が定めた婚姻の約束を破棄し、行方をくらませた。重大な背信行為により、追跡の許可が出ています」
  
 その文言に、私は一瞬目を伏せ、静かに息を吐いた。
 ――ジルさんだ。間違いない。

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