第7章 沈黙の証言
それからというもの、誰からともなく、“視線”が増えていった。
トレーニングルームで、
廊下で、
食堂で――
優人がに近づけば、必ず誰かの視線がそこにあった。
潔は気づかれないように距離を保ち、千切はさりげなくその場に居続けた。
國神は露骨に牽制するわけではないが、優人の行動を観察し、時に言葉を挟んだ。
凪に至っては、ふわふわとした様子のまま近くに現れては、
「よく会うねー」と適当に会話を挟み、空気を乱すことなく割り込む。
優人は――最初こそ、気づかないふりをしていた。
けれど、少しずつ、視線に苛立ちが滲み始める。
たとえば、がミーティングルームで資料を整理していたときのこと。
優人がふらりと入ってくると、すぐに凪が部屋の隅から声をかけた。
凪「ここ、寒くない?ドア閉めてもいい?」
ただそれだけの言葉。けれど、優人はわずかに表情を曇らせ、何も言わずに背を向けた。
潔(……気づいてる。こっちが“見てる”って)
潔はその瞬間を見逃さなかった。
同時に、確信した。
この人は、まだ“終わっていない”だけじゃない。
“終わったことにするつもりもない”――そんな目をしていた。
は、何も言わない。
けれど、その沈黙の向こうにある恐怖に、ようやく皆が目を向け始めていた。