第7章 沈黙の証言
それは、ある午後のことだった。
グラウンドでは簡単な体力測定が行われ、トレーナーである優人もその補助に入っていた。
はメモ片手に、選手たちの記録を取りながら、タイムや心拍数のデータを集めていた。
日差しが強く、芝の香りが空気に混じる中、優人が自然に横に並ぶ。
優「……最近、ちゃんと寝れてますか?」
突然の問いに、の指が一瞬止まる。
「……はい。大丈夫です」
優「ほんとですか?前は、寝つきが悪いってよく言ってたから」
柔らかく笑いながら、昔話のように投げかけられる言葉。
けれど、その優しさが、どこか怖かった。
「今は、ちゃんと……大丈夫ですから」
視線を逸らし、距離を取るように一歩退く。
その瞬間、背後から國神の声が飛んだ。
國「天羽、水、持ってきた。……休憩入れってさ」
それは、本来は潔の役目だった。だが彼と視線を交わした國神は、言外にすべてを察していた。
「……ありがとう」
渡された水を受け取り、國神の隣へと逃げるように並ぶ。
その背後で、優人の笑みが、ほんの僅かに固くなった。
潔(……あの反応、やっぱり)
視線が交差する。
優人は潔を一瞥し、すぐに目を逸らした。
しかしその瞳には、明確な“敵意”があった。