第6章 やぶれない檻
國「……怖がってた?でも、あの人はトレーナーとして評判いいし、帝襟さんも信頼してるようだったけど……」
潔「前にさ、帝襟さんと話したとき……さんが施設に来た理由、少しだけ聞いたんだ。詳しいことまでは聞いてないけど、“束縛の強い恋人と暮らしてた”って。その人が原因で、心に深い傷を負ったって」
千「え……まさか」
凪「それがあの人ってこと……?」
國「いや、でも……だって、黒田さんと天羽に、そんな接点あったか?今まで一言も……」
潔「それが、逆に変なんだよ。こんなに同じ空間にいて、まともに会話もしてない。目も合わせようとしない。しかも、黒田さんが近くにいるといつも不安定になる」
千切「……確かに」
凪「接点があったんじゃなくて、“あったことを隠してる”って感じかも」
國「……それで、黒田さんが“その元恋人”の可能性があるってことか」
潔「確証はない。でも、繋がってきてる気がする。……だから、警戒しておきたい」
千「……信じがたい話だけど、のあの様子を見たら……疑うなって方が無理だ」
凪「……じゃあ、しばらくは、さりげなく見張っとく?また倒れたりしたら困るし」
國「俺も協力する。あいつが何かしたら、すぐ止められるように」
潔「ありがとう。……無理に信じろとは言わない。でも、さんのために、少しだけ目を向けてほしい」
頷く三人。
まだ疑念は完全じゃない。
でも、確かに心に引っかかるものが生まれていた。