第6章 やぶれない檻
──の部屋に着くと、潔はそっとドアを開け、中へと促した。
潔「ここなら、落ち着けるよ。ゆっくり休んで」
は小さくうなずき、ベッドに腰を下ろす。
潔「何かあったら、すぐ呼んで。俺はここにいるから」
優しく促しながら、潔はそっと腕を伸ばし、を支えた。
抵抗することもなく、彼女は力なく身体を預ける。
その体温の温かさに、潔の胸がぎゅっと締めつけられた。
ベッドに横たわるの瞳は薄く閉じられているが、時折細かく瞬きを繰り返し、完全に眠りに落ちていないことが伝わる。
何かに怯えているような微かな震えが、袖を握る彼女の指からも感じられた。
潔はその手を優しく包み込み、力が抜けるまでじっと待った。
握っていた指先がふっと緩み、そっと離れていく。
それが合図のように、の顔から少しずつ緊張が解けていく。
潔「大丈夫だよ、安心して。もうここは安全だから」
優しい声で囁くように言うと、はゆっくりと小さく頷いた。
「……ありがとう、潔くん」
その声はかすかで、まだ不安が完全に消えたわけではなかったが、表情は確かに穏やかだった。
潔「眠れなくても、無理に寝ようとしなくていい。寝るまでちゃんとここにいるから」
潔はそっと彼女の髪を撫で、そっと手を握り返した。
は静かに目を閉じる。
小さく吐息を漏らし、やがて緊張の糸が切れたかのように全身の力が抜けていった。
ゆっくりと寝息が部屋を満たす。
潔は小さく息をつき、の手をそっと離した。
ベッドの脇に置かれた椅子に腰を下ろし、しばらくその寝顔を見つめた。
潔「ゆっくり休んで……」
静かな呟きを最後に、潔はそっと部屋の明かりを消した。
そして、ドアの前で一度だけ深呼吸をしてから、静かに部屋を後にした。