第6章 やぶれない檻
──重たい沈黙を破ったのは、ノックの音だった。
小さく、しかし妙に静けさを打ち消すような、慎重な音。
潔「……戻ってきた、みたいだね」
潔の言葉に、がびくりと肩を震わせる。
その反応に、彼はますます胸の奥がざわついた。
ドアが開く。
そこに立っていたのは、変わらず穏やかな笑みを浮かべた優人。
けれどその笑みの奥、目元にはわずかに張りつめた光があった。
優「……話は、もう終わった?」
その一言に、潔は一瞬だけ目を細めた。
微妙な語尾の硬さ。どこか急かすような空気が、その声にはあった。
「はい……」
の声はかすれていたが、精一杯平静を装っているのが伝わった。
潔は彼女に視線を送り、何も言わずそっと立ち上がる。
潔「さん、自分の部屋で休んだほうがいいんじゃないかな。人の部屋は緊張するだろうし、ベッドも使い慣れてるほうがゆっくり眠れると思う」
その言葉に、優人の眉がわずかに動いた。
口元の笑みは保ったままだったが、目の奥に鋭い光が宿る。
優「ここでも十分休めると思うよ。わざわざ動かす必要あるかな?」
潔「……そこまで、この部屋にこだわる理由ってありますか?」
潔は思わず感じた違和感を言葉に出してしまっていた。
優人はその言葉にふっと軽く笑った。
優「いいや?そんなことはないよ。ただ体に負担がかかるんじゃないかと、そう思っただけだ。だけど潔くんがそんな言うなら、僕が送ってくるよ。さん、立てる?」
優人は優しくに声をかけた。
しかし潔はそう言って肩に触れようとする優人を遮るようにの前に立った。