第6章 やぶれない檻
けれど潔は、穏やかに、けれどまっすぐに優人を見返す。
潔「わかります。でも、少しだけでいいので……さんと2人で話せませんか?」
決して"どいてほしい"とは言わない。
けれど、明らかに“2人きり”を求めていた。
優人の喉がかすかに動いた。
表情は笑顔を保ったまま、だが、そのまなざしは明らかに色を変えていた。
──その場を離れるつもりはない。
彼はそこに居座ろうとしている。
しかし潔は、その空気ごと、すっと割って入るような声で言った。
潔「さん、……俺とちょっとだけ、話してもらえませんか?」
そのとき、がほんのわずかに潔の方に顔を向けた。
その視線が、ほんの一瞬でも「助けて」と言っていた気がした。
潔は、その一瞬を見逃さなかった。
優人はなおも笑みを崩さずにいたが──
その手の甲には、うっすらと力が込められていた。
優(……ちっ)
ほんのわずかに、息が漏れたような気がしたのは、潔の勘違いだっただろうか。
やがて、優人がゆっくりと立ち上がる。
優「……少しだけ、ね」
にこりと笑って、けれどその背中からは冷たい気配がにじんでいた。
優「呼ばれたら、すぐ戻ってくるから。さん、無理しないでね」
そして、ゆっくりと扉を開け──
名残惜しそうに視線を残したまま、廊下へと出ていった。
──扉が閉まる。
空気が、またひとつ変わる。