第6章 やぶれない檻
潔「……すみません、潔です。さん、起きてますか?」
部屋の扉が少し開き、顔を覗かせたのは潔だった。
中の様子を見て一瞬、息を飲むような表情を浮かべるが、すぐに心配そうな目でを見つめる。
潔「よかった……起きてる。どうしても心配で、医務室探したけどいなくて……凛に聞いたら、黒田さんの部屋だって言ってて……その、無事ならいいんだけど」
は、視線を逸らしたまま小さく頷いた。
ここに“いる”はずなのに、心はまるでそこにないようで──
潔の眉がわずかに動いた。
優「心配かけてごめんね。でももう大丈夫だから、さんには少し休ませてあげようと思ってるんだ」
声のトーンは柔らかい。
けれど、言葉の裏には"もう帰って"とでも言いたげな、無言の圧があった。
潔は一度、「あ……そうなんですね」と言って引き下がろうとする。
──が、足が止まる。
潔「……でも、」
ふとの手元に視線を落とし、その震えを見つけたとき──
何かが、引っかかった。
潔「ちょっとだけ……もう少し話してもいいですか?さっき倒れたとき、……あのとき、さん……俺の袖、握ってたんで」
一瞬、空気が張り詰める。
優「……そう。ありがとう。心配してくれて。でも、さっきも言ったように──今は休ませてあげたくて」
優人の笑顔が、わずかに固くなる。
その目の奥に、先ほどまでとは違う色が宿っていた。
苛立ち──
"邪魔された"という不快感。