第6章 やぶれない檻
──静まり返った部屋の中、優人はをベッドにそっと横たえ、ゆっくりとの隣に腰を下ろした。
目を覚ましたとき、最初に感じたのは──頬に触れる、ぬるい指先だった。
重たい瞼を押し上げると、そこには優人の姿があった。
ベッドの傍に腰掛け、の髪を指に絡めながら、どこか遠くを見るように目を細めていた。
優「……ほんと、無理してたんだね。クマ、こんなに深くしてさ」
その声には、怒りも皮肉もなかった。
ただ、心から心配しているような響きがあった。
けれど──
の全身がこわばる。その表情を見て、優人がふと動きを止めた。
優「……ああ。やっぱり……怖いんだ」
そっと手を離し、静かに視線を落とす。
優「でもさ、。俺、本当に心配したんだよ。倒れたとき……焦った。どれだけ会ってなかったとしても、君が苦しんでるのを見て、平気でいられるわけないだろ」
その目は、わずかに潤んでいた。
ほんの一瞬、少年のような脆さが垣間見える。
優「ねえ……戻っておいでよ」
囁くように言いながら、の手を包む。
優「俺たちは……お互いがいないと、生きていけないんだよ」
──その言葉は、優しくて、切実で、そして、息が詰まるほどに逃げ場がなかった。
優「ずっとそばにいるからさ」
ぽつりと落とされた言葉に、は思わず顔を上げる。
優「……覚えてる? あのとき言ったよね。“ずっと一緒にいようね”って……。君がそう言ってくれたから、俺、今までやってこれたんだよ」