第6章 やぶれない檻
の肩が、ようやく震えを収め始める。
凛はそれを確認しながら、過剰に言葉をかけることはなかった。ただ、黙って寄り添い、落ち着いた呼吸のリズムを促し続ける。
やがて──
はゆっくりと顔を上げ、赤くなった目を隠すように手の甲で拭った。
凛「……落ち着いたか」
「……うん……ごめん……ありがとう……」
その小さな声に、凛はほんの少しだけ視線を伏せた。
凛「理由は聞かねえ。でも……おまえ、限界近いだろ」
そう言った凛の声には、責める色も哀れむ色もなく、ただ事実としての冷静さだけがあった。
は唇を結び、わずかに頷く。
凛は立ち上がり、手を差し出す。
もまた、少し躊躇ってからその手を取って立ち上がった。
ふたりが並んで、ゆっくりと廊下を歩き出す。
凛はをの部屋の前まで連れて来た。
凛「…入れよ」
「凛くん、ありがとう…」
凛「…別に気にしなくていい」
「…もう、大丈夫だから…。凛くんが廊下曲がるまで見てるよ」
凛「…そうかよ。勝手にしろ」
凛はそう言って去った。
そして凛が曲がったのを確認して部屋に入ろうとすると、
優「ずいぶんと仲が良さそうだね」
「!!!?!?」
また全身が凍りついた。
すぐ横から、忘れたくても忘れられない、そんな声が響く。
は浅い呼吸でゆっくりと声の方を振り返った。
「…っ…優…人…っ…」
優「久しぶり、」
優人の顔には朗らかな笑みが浮かんでいた。
しかしその瞳の奥は一切笑っていなかった。