第5章 忘れられない人
優人はすぐにブルーロックの雰囲気に馴染み始めた。
ーストレッチ中ー
千「……あ、それ少し痛いかも」
優「千切さん、膝裏ですよね? 前にも気になるって言ってましたし、メニューを調整しましょうか」
千「……あ、うん。ありがと」
千切は少しだけ笑って、ストレッチを優人に任せる。
最初は人見知り気味だったはずなのに、今では自然にやりとりができていた。
優「國神さん、足の踏み込み、右に比べて左がほんの少し浅いかもしれません」
國「……自覚はなかった。見てたのか」
優「フォーム綺麗なんで、そこだけ整えればかなり変わると思います」
國「……了解。やってみる」
國(ロッカーの前で見かけたやつ…黒田さんに似てると思ったけど…この人は多分違うか…俺の見間違いだな)
短い会話。でも、その中に信頼が芽生えかけていた。
優「凪さん、少しだけ股関節を動かしましょう。疲れない程度に」
凪「え〜……まあ、軽くなら」
優「ありがとうございます。怪我のリスクだけは減らしておきたいので」
凪「……ふーん。まあ、悪くないかもね、そういうの」
凪はぼんやりしたまま、それでも文句を言わずストレッチに付き合っていた。
いつもなら無視するような場面でも、今日は違っていた。
スタッフルームではアンリが紙資料を広げながら、優人に話しかけていた。
ア「黒田さん、こんな細かいとこまで気付けるのすごいですよ。こっちも助かってます」
優「いえ、皆さんが頑張ってるからこそですよ。サポートできるのはありがたいです」
ア「ほんと真面目でありがたいなぁ……。人当たりもいいし、安心して任せられる」
何気ない会話。それが自然と信頼を積み重ねていく。
──そんな中。