第5章 忘れられない人
そんなささやかな日々が続いていたある日の夕方。
共有スペースでもある食堂では、みんなが集まり、穏やかな空気が流れていた。
千切がドリンクを片手にテーブルへ戻り、潔と凪が何かを言い合っている。國神も、少し離れた椅子に座ってそれを見ていた。
潔「おい、ここ俺の席な!」
凪「えー……オレここで寝てたのに~」
千「また凪の“居たアピール”かよ。さっさとどけ!」
國「……お前ら、いつまで言ってるんだ」
はみんなのそばでテーブルを拭いていたが、その騒がしいやりとりに、思わずくすっと笑う。
その笑いに、潔がふとこちらを向いた。
潔「おっ、今笑った。ほら、やっぱ俺の勝ち!」
凪「は?笑わせたのオレでしょ」
千切「いやいや、俺だろ。なあ、?」
國「お前らなぁ……」
そんな声に、は「ふふっ……」と小さく笑って答えようとした——そのとき。
ふと、視界の端に見慣れない姿が映った。
(……え?)
奥のガラス張りの廊下を、アンリと誰かがゆっくりと歩いていく。
(……うそ)
一瞬で、全身が凍りつく。