第4章 忍び寄る影
翌朝。
うっすらとまぶしい光がカーテンの隙間から差し込んでいる。
は眠気の残る体を起こし、ベッドの中から静かに伸びをした。
(……昨日、ちゃんと寝られた……)
ほんの少し涙の跡が残る頬に指をやる。
でも、心は昨日よりずっと軽い。
そのとき――。
「……?」
廊下から、何かの気配がした。
そっと扉を開けてみると、そこには――
「……凪くん?」
壁にもたれたまま、座り込むようにして眠る凪の姿。
「え……どうして……?」
戸惑いながら近づこうとした瞬間、凪がまばたきをして、ゆっくりと目を開けた。
凪「……あー、……おはよ」
「お、おはようございます……えっと、もしかして……ずっとここに?」
凪「んー……気付いたら朝だった」
「なんでそんなことを……?」
凪「なんとなく、心配だったから。……また泣くかなって思って」
そう答えると、は目を丸くしたあと、ゆっくりと、でもすごく優しい表情になった。
「……ばか」
凪「……ばかでいいよ。泣かないで寝られたなら」
凪は、照れもなく、正直なまま言葉を返した。
「風邪、引いちゃうじゃん…」
凪「うん」
「ありがとう…」
凪「いーえ。ご飯食べ行こ」
凪は少し微笑むと、そのままの手を引いて食堂へと向かった。