第4章 忍び寄る影
凪side
静かだ。
こんなに音のない夜は、ブルーロックの中でもめずらしい。
壁に背を預け、膝を立てて座る。
スマホもゲームも置いてきた。
ただ、ここにいる理由は……言葉にするのがちょっと面倒だった。
凪「……また泣いたら、どうしようって思っただけ」
誰に聞かれたわけでもない。
ただ自分にそう言い聞かせるようにそう呟いて、ひとつ息を吐く。
倉庫での震える姿が、頭から離れなかった。
怯えて、目をぎゅっとつぶって、助けを呼んでいた。
すごく小さく、壊れそうだった。
あんなの見せられて、放っておけるわけがない。
面倒だからって感情を避けてきた自分が、
あんなに真剣に誰かのことを思って動いたの、たぶん初めてだ。
凪(気になる、なんてもんじゃないかもな)
目を閉じて、浅く眠る。
廊下は寒くて、硬くて、眠りは浅いけど――
それでも、今日はこのままでいいと思った。
誰も気づかなくてもいい。
朝まで、ここで過ごそう。