第3章 意識の始まり
國神が、壁に寄りかかりながら口を開いた。
國「でも、お前みたいなやつなら……いいかもしれないな」
千「えぇ!? 國神が褒めた!? どした!? 熱あるのか!?」
國「俺だって褒める時は褒めるぞ」
笑いが弾ける中、1人だけその輪に加わっていない人物がいた。
少し離れた椅子に腰かけて、静かにスマホを見ていたのは凛だった。
ふと、がそちらに目をやる。
凛も同時に顔を上げ、数秒目が合った。
──けれど、凛はすぐに視線をそらす。
何事もなかったように、またスマホの画面に視線を落とした。
(……ちょっと不機嫌そう、だけど)
は少しだけ微笑んで、視線を外した。
潔「……さんはほんとにいい人だね」
潔がぽつりと呟いた。
國「頑張ってるの、わかるし」
國神も短く言葉を添える。
凪「がんばりすぎ、な気もするけど」
凪が目を閉じて言う。
凛「…」
スマホを見ているようで、指は止まったまま。
誰かの笑い声に、ほんの一瞬だけ表情が曇った気がした。
みんなのその言葉に、少しだけ胸があたたかくなる。
孤独だった時間が、不安が、ほんの少し、和らいだような──そんな気がした。
(……ここでなら、少しだけ、笑えるかもしれない)