第3章 意識の始まり
は胸に小さな不安を抱えたまま、それを知らんぷりするかのように、目まぐるしく日々は過ぎていく。
ある日、訓練が終わった夜の共有スペースには、ほどよく疲労を感じた選手たちの笑い声と、スポーツドリンクのペットボトルが開かれる音が響いていた。
空調の効いた広い空間の片隅で、さなは静かにテーブルを拭いていた。
千「おーい、さなちゃん。座んないの?」
「え? あ……まだちょっと、片づけが……」
手に持ったタオルを見て言い淀む。
千「そんなん後ででいいじゃん。てか、マネの仕事とか気にすんなって。休憩も仕事のうちっしょ」
千切は軽く手招きした。
凪「そうだよー。さっきのプリン、うまかった。あれどこの?」
寝ぐせ頭のまま座る凪 誠士郎が無造作に言葉を投げる。
「私が栄養士さんに言って買ってもらってるものだから分からないけど……試合後は甘いものがいいってネットで見て……」
凪「気ぃ使ってんだ。すごいね」
凪が目を細める。面倒くさがりな彼が、わざわざ褒めるのは珍しい。
そこに、ドリンクを持った潔 世一がやってくる。
潔「さん、いつもありがとう。助かってる」
丁寧に頭を下げた潔に、も思わず笑顔を返した。
「いえ……私こそ、役に立ててるなら嬉しいです」
國「十分、役立ってるよ。……俺、ずっと、サッカー以外の人間がここにいるのってどうなんだろって思ってたけど」