• テキストサイズ

奪い合う光の中で【ブルーロック】

第3章 意識の始まり


凛side

凛は共有スペースを出て、静かな廊下をゆっくり歩く。
天井の灯りが淡く照らす先に、誰もいない。
けれど、自分の心の中には、あのときの紅茶の香りが残っていた。

凛「……なんで、聞いたんだろ」

ぽつりと独り言のように呟く。
あいつのことなんて、どうでもいいと思ってたはずなのに。

でも、見たんだ。

あの子の、指の関節にうっすら残る痕。
少しだけひきつったような笑顔。
カップを持つ手の、小さな震え。

気づく人間なんて、きっといない。
でも自分は、ああいう目を知ってる。

凛「……クソみたいな世界だな」

感情を押し殺して生きてきた。
誰かに期待しないようにしてきた。

でも――

凛(もしあいつが、誰かに壊されてるなら)

ほんのわずかでも、自分の中の何かが動いた気がして、凛は小さく舌打ちした。

凛「関係ねぇよ……そんなの」

そう言いながらも、あの夜の光景は、頭から離れなかった。

…それでも。
自分の目にだけ映った“あの震え”を、見なかったふりはできなかった。

凛(俺も、きっと……どこか似てると思ったんだろ)
/ 175ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp