第3章 意識の始まり
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――ほんとは、誰にも知られたくなかったのに。
部屋に戻って、ベッドに潜り込むと、は胸に手を当てた。
さっきの凛くんの一言が、頭の中で何度もリピートされている。
"その彼氏っての、どんなやつ?"
ただの興味かもしれない。
何かのきっかけで聞いただけかもしれない。
でも――それでも。
「なんで、胸がこんなにざわざわするの……」
あの人からは逃げてここに来た。
居場所も知らないはず。
あの人のことも誰にも話していないはずなのに…一体どうして…
それに……
彼の目。
鋭くて冷たそうなのに、どこか…隠すような、傷ついた人の目だった。
もしかして、何か気づいたのかな。
それとも、私の顔に、出ちゃってたのかな。
「…やだな。私、ちゃんと笑えてると思ったのに」
(でも、誰を信じたらいいのか、もうわからなくなってる)
私が壊れちゃったら…
ちゃんと元気そうにしてなきゃ、ちゃんと、いいマネージャーでいなきゃ――
そうやって自分を守ってきたのに。
「……凛くん、ちょっとズルいよ」
ぽつりと呟いた声は、自分でも驚くくらい寂しげだった。