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奪い合う光の中で【ブルーロック】

第3章 意識の始まり


凪「……ねぇ、」
 
「えっ、あ……凪くん?」
 
ちょうど荷物を片付けていた彼女が、驚いたように顔を上げる。
 
凪「……テーピングってどうやんの?」
 
「え? えっと……膝?」
 

凪「ううん、別に。気になっただけ。……あーでも、ちょっとだけ手首打ったかも。なんか変なとこで転んだ」
 
「えっ!?だ、大丈夫? すぐテープ持ってくるね」
 
慌てて救急箱に走っていく背中を見ながら、凪はぽつりとつぶやく。
 
凪(別に……そんな痛くないけど)
 
が戻ってきて、ぎこちなくも丁寧にテーピングを巻いてくれる。
 
その距離が、少しだけ近く感じた。
 
「……どう?キツすぎない?」
 
凪「うん、いいと思う。……あ、ついでにちょっと練習付き合ってよ」
 
「え、れ、練習!?私でいいの?」
 
凪「うん。ボール拾うだけでいいから。……楽でしょ、そのほうが」
 
言いながら、凪はを引っ張ってコートの隅へ向かう。
そのやり取りを見ていた周囲が、ざわついた。
 
潔「……珍しいな、凪が自分から声かけてんの」
 
千「……ふーん」
 
凪は気づいていないふりをした。
 
自分でもよくわからないこの感情を、面倒くさい、で片付けた。
 
凪(なんでかな。楽したいだけなのに……)
 
けれど、が自分のそばにいることで、心のどこかが少しだけ、落ち着いた気がしていた。
 
 
 
千切side
 
 
潔「……珍しいな、凪が自分から声かけてんの」
 
千「……ふーん」
 
少しだけ、目を細めた。
凪がわざわざに声をかけたのは初めてじゃないか?
ましてや、手当てしてもらって、そのまま練習に誘うなんて。
 
千(……そっか、そういうの、アリなんだな)

——近づくのって、別に理由なんかいらねーのかもな。
 
自分は、気づいてもらった。無理してるのを。
けど、凪は違う。あいつは、自分から近づいていった。
 
千(……負けてらんねーかも…って何言ってんだ俺は)
 
冗談のように笑って、自分の膝に軽く触れる。
さっき巻いてもらったテープは、まだほんのり温もりを残していた。
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