第3章 意識の始まり
凪side
練習終わり、何となく廊下を歩いていた。
特に目的もない。ただ、スマホにも飽きて、部屋に戻る気も起きなかったから。
角を曲がったとき、ふと見えた。
控室のベンチで、と千切が並んで座っているのが。
少し距離があるけど、何してるかはなんとなくわかる。
凪(……テーピング?)
が真剣な顔で千切の膝に触れて、何か言っている。
千切は、どこか安心したような顔でそれを受けていた。
……その光景に、凪はなぜか足を止めた。
ほんの少しの違和感。
でも、それが何なのかは自分でもよくわからない。
凪(……ふーん。なんか、やだな)
その瞬間、自分で驚いた。
「やだな」って、なんだ。
別に、千切と仲いいのは普通のことだし、
だって誰にでも優しい。
それなのに。
凪(なんでだろう。モヤモヤすんの、意味わかんない…こんなん、めんどくさいだけじゃん)
わざとスマホを取り出して、通知もない画面を見つめた。
いつもなら、それだけで何も考えずに済んだのに。
今日はなぜか、余計にソワソワした。
凪(……てか、なんでオレ、見てんだ)
溜息をひとつついて、ようやく視線を外す。
しかし気持ちとは裏腹に、視線が勝手にそっちにいく。
千切とが離れたのを確認すると、気づいたら足が動いてた。