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奪い合う光の中で【ブルーロック】

第3章 意識の始まり


國神side

翌朝、まだ太陽がのぼりきらない時間。トレーニングが始まるには少し早い午前六時。

國神はその日、いつもより早く部屋を出た。
前夜、なぜか落ち着かず眠れなかった。体を動かせば整うかもしれない、そう思って廊下を歩いていた時。

――す、と音がした。長い柄のモップを滑らせる音。

共有スペースの隅に、ひとりで掃除している影があった。
華奢な背中。動きはまだぎこちないが、どこか真剣で丁寧。

國「……朝から、頑張ってるな」

声をかけるつもりはなかった。けれど、自然と口から出た。
は驚いたように振り返って、ぱっと笑顔を見せた。

「おはよう、國神くん。…ごめん、邪魔になってない?」

國「いや……むしろ、偉いと思った」

そう言って、彼は黙ってモップを取りにいった。
隣に並ぶと、何も言わずに掃除を始める。

「……國神くん、まっすぐだね。掃き方が、なんだか國神くんっぽい」

國「なんだそれ」

「ふふふ、そのまんまだよ」

まだうまくやれるかわからないけど、できることを、できる形で一生懸命に。
そんな彼女の姿に、國神はふと、以前の自分を重ねた。

國「……俺たちは、サッカーで上を目指すために来てる。でも、支えてくれる人がいるなら、ちゃんと向き合わなきゃな」

ぽつりと漏らした言葉に、は一瞬ぽかんとしてから、微笑んだ。

そのまま二人は言葉少なに、並んで床を磨き続けた。
澄んだ朝の空気に、ほんの少し、心の距離が縮まった気がした。
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