第3章 意識の始まり
潔(いや、でもこれ……おかしいな)
昨日、補充の指示出してたの、別の職員だったはずだ。
確か、あいつが曖昧に「青い方って言っといて~」って軽く言ってるのを聞いた覚えがある。
しかも、が来たのはその直後。説明も曖昧で、それで間違えるのは当然だ。
潔「なぁ、それさんのせいじゃないよな」
思わず口が動いた。は、はっと顔を上げる。
目が大きく揺れて、それでもすぐに笑って首を横に振った。
「あ…大丈夫だよ。私が確認を怠ったから……。次から気をつけるね」
潔(……いや、“大丈夫”じゃねぇだろ)
まるでそれが当たり前かのように謝るその顔に、俺の中の何かがきしむ。
気を遣ってるとか、責任感とか――そういうのじゃない。
もっと奥に、無理して笑ってる“何か”があった。
潔「……なんでそんなふうに謝るんだ?さん、悪くないよ」
口にした瞬間、がまた小さく笑った。
「でも私が最後に確認しなかったから……。気をつけるね、次からは」
まるで、それが当然かのように。
何かを怖れているような――そんな空気を彼女から感じた。
潔(……なんでだよ。そこまで自分のせいにしなくても)
言い返したかったが、彼女の柔らかな笑顔に、言葉が詰まった。
まっすぐで、優しくて、どこか痛々しいほど健気なその表情が、喉の奥を引っかいた。
潔(なんなんだ、あの感じ……)
理由のわからない胸のざわつきが、潔の中に静かに沈んでいく。
――まるで、それが、自分の問題でもあるかのように。