第3章 意識の始まり
こんなふうに、誰かの胸に静かに灯りがともる日々が、少しずつ積み重なっていた。
――そして翌日。
潔side
午後のミーティングが終わり、選手たちはそれぞれ自主トレや休憩に向かって散っていく。
潔は1人、まだ共有スペースに残っていた。昼の試合を頭の中で反芻していたせいだ。立ち止まって考えてしまうのは、どうしても直したくない自分の癖。
そんな中――冷蔵庫前で、少し声が上がった。
馬「おい、違ぇよこれ。俺が頼んだのは“青キャップ”のやつだ。これは“青ラベル”。」
そう言って、馬狼がイライラした様子でスポドリを冷蔵庫に戻した。
その正面で立っていたのは、だった。
「す、すみません!私……間違えて補充してしまったみたいで」
小さな声で、けれどハッキリとそう言って、深く頭を下げる。
その手にはすでに代わりのドリンクが数本握られていた。
反射的に頭を下げるその姿――俺は足を止めて見入ってしまった。