第3章 意識の始まり

潔side


潔はふと、ふたりの空気に違和感を覚えた。

は柔らかく笑っていて、國神はそれを無言で受け取っている。

潔（……なんか、ふたりでいい雰囲気だった？）
　
の笑顔は変わらず柔らかくて、見るたびにどこか胸がくすぐったくなる。
けれど、國神のほうはいつもより少し無口で――

潔（……ん？）

のノートのページが、風でパラリとめくれた。
ちらっと見えたのは、自分の名前と「差し入れの傾向」や「疲れてるときの表情の違い」なんていう驚くほど細かい記録。

潔（……まじか。こんなに見ててくれてたのか）

潔「さん、それ……俺のことも書いてくれてたの？」

「え？ あっ、いや、その……参考までに、ちょっとだけ……！」

しどろもどろになるを見て、潔は素直に嬉しくなって、にやりと笑った。

潔「……ありがとう。頑張るよ、俺も」

國神のほうを見ると、何も言わずにドリンクを一口飲んでいる。

潔（……ちょっと邪魔しちゃった？ いやいや、マネージャー相手に何考えてんだ俺）

でも、その“何か”が始まりつつある気配だけは、潔も國神も、うっすら感じ始めていた。