第17章 凛
しばらくの沈黙のあと、凛はゆっくりと息をついた。
部屋の中には、夕陽のオレンジと、の浅い呼吸だけが静かに満ちていた。
——ずっと不思議だった。
気づけば目で追っていた。
話していなくても、部屋にいなくても、あの子がどこにいるかは何となく分かった。
笑った顔を見ると、なんか落ち着く。
誰かと話してると、なぜか気に障る。
ひとりでいると、なぜだか近づきたくなる。
最初は、自分でも「変だな」と思ってた。
でも、たぶんもう、そういうのじゃない。
凛(……面倒くさいな、ほんと)
心の中でそう吐き捨てながら、それでも否定できない想いがある。
この胸のざわつきは、どこにも逃げ場なんかなくて。
誰かと比べたくもないし、同情や哀れみで片づけたくもなかった。
ただ、あの子を——を、どうしようもなく、愛しく思ってしまう。
泣いている姿なんか、見たくなかった。
でも、見つけてしまったのなら、もう放っておけなかった。
凛(……そういうのって、“好き”って言うんだろ、普通)
認めるのは、少しだけ癪だけど。
でも、自分がいまのためにここにいる理由は、
それ以外の言葉じゃ、もう言い訳できなかった。