第17章 凛
しばらく無言のまま、隣にいた凛がふと立ち上がった。
そして、窓から差す淡い光の中で、少しだけ姿勢を変え、の前に立つ。
は驚いたように顔を上げる。
でも凛は、感情の読めないまなざしで、ただじっと見つめていた。
凛「……お前が泣いてるの、もう見たくねぇんだけど」
それだけ。
でも、その声はひどく静かで、心にじんわりと染み込むようだった。
は、「なんで…」と返そうとして唇を開きかけた。
けれどその瞬間、凛の指先が頬に触れた。
力はこもっていない。
ただ、そこに触れていた——まるで、「今言うから待て」とでも言うように。
そして凛は、ほんの少しだけ目を伏せて、
もう一度だけを見た。
凛「……好きだからだ」
淡々としていて、照れた様子もなく、飾り気もなかった。
でもその一言には、どこまでも澄んだ想いが詰まっていた。
強くも、弱くもない。
ただ凛という人間そのものが、目の前でその言葉を言っている。
それは、言い逃れもできないほど真実で、
それゆえに、の胸の奥まで届いてしまう言葉だった。