第2章 新マネ登場
一方そのころ、管理室。
アンリはスマホを手に取り、連絡先を確認してから、画面をタップした。
ア「……あ、もしもし? 今、ちょっと大丈夫?」
電話の相手は、大学時代の後輩、咲だった。
アンリが数少ない信頼を置く人物――を紹介してくれた、その本人だ。
咲『うん、そっちはどうです?、無事にやってます?』
ア「うん、全然大丈夫そう。むしろ……すっごく頑張ってくれてる。最初はちょっと緊張してたけど、真面目で、一生懸命で……」
アンリの声は、少し柔らかくなっていた。
ア「来てもらって本当によかった。……ありがとね、紹介してくれて」
咲『ううん、のこと見てて、アンリ先輩のとこでなら頑張れるかもって思ったんだ。ちょっと心配なところもあるけど、いい子だから……頼れる人がそばにいれば、きっと大丈夫』
ア「……うん。私も、そう思ってる」
咲『……あの、アンリ先輩』
ア「ん?」
咲『えっと……ちょっと言うか迷ってたんだけど――』
言い淀んだその一言に、アンリの表情が少し引き締まる。
咲『……実は、最近まで一緒に暮らしてた男の人がいて。彼氏っていうか……うーん、ちょっと複雑な関係なんですけど』
ア「複雑?」
咲『の母親と、その人の父親が付き合ってて。でも結婚はしてなかったんです。で、2人とも突然いなくなっちゃって……』
ア「……!」
咲『それからは、とその人だけで暮らしてて。お互いが唯一の家族、みたいに。でも……なんていうか、、その人にすごく縛られてるような感じがしてて』
ア「……」
咲『外面はいいんだけど、の目が時々すごく怯えた感じしてて……はっきりとは言えないんですけど…でも、もし何かあったら、アンリ先輩が少しでも気づいてあげられたらって……』
咲は少し息を吐くと、さらに続けた。
咲『正直……私もどこまで踏み込んでよかったのか、今でも迷ってます。あの子、何も言わないから』
アンリは静かに頷きながら、深く一度だけ息を吐いた。
ア「うん。分かった。……ちゃんと見てるよ、これからも。ありがとう、教えてくれて」