第2章 新マネ登場
ドリンクの補充も終え、凪と千切との会話の余韻がまだ胸の奥に残る中――
は備品管理室へと戻り、残っていた作業を片付けていた。
「ふぅ……これでひと通り、今日は大丈夫かな……」
タオルを畳み終えたところで、やっと自分の呼吸に意識を向ける余裕ができた。
隅のベンチに腰掛け、小さく息をつく。
(緊張したけど、なんとかできた……かな?)
國神くんに助けられて、凪くんにはカートを運んでもらって、千切くんにも言葉をかけてもらった。
初対面ばかりだったけど、みんな冷たくはなかった。
それが嬉しかった。
(でも、まだ全然慣れてないし……気を抜かないようにしないと)
そう思って目を閉じた、その瞬間。
ガチャッ――
不意に扉の開く音がして、はビクッと肩を揺らした。
振り返ると、そこに立っていたのは――
鋭い目つきと、エメラルドの瞳。糸師凛だった。
「あ…あの……何か……」
凛「俺に構うな」
その言葉は刃のように冷たく、問答無用の圧を持っていた。
は思わず言葉を飲み込む。
凛は無言でプロテインと縄跳びを手に取ると、扉の方へと向かった。
けれど去り際、背中越しに低く呟く。
凛「俺は自分のことは自分でやる。そんなに怯えて、何を隠してここにいるのかは知らないが――俺の邪魔はするな」
そのまま、足音も静かに凛は去っていった。
「…………」
残された空気はどこか凍りついたようで、は小さく息を飲んだ。
(……怖い。けど……)
あの人の言葉は、まるで胸の奥を覗かれたようで――
否定するよりも先に、何かが突き刺さって抜けなかった。
(ここでは、ああいうのが“普通”なのかもしれない。……でも、負けたくない)
両手を膝の上で握りしめながら、はそっと目を伏せた。