第16章 國神
國神の目が大きく揺れた。
そして、迷いなく立ち上がると、の前に膝をついた。
「——違う」
その声は、いつもより少しだけ低くて、
それでいて、どこまでも真っ直ぐだった。
國「そんなこと、言わないでくれ。誰がなんて言おうと……は、汚れてなんかいない」
の視界はもう既に全てが滲んで何も見えないほどになっていた。
國「……俺は、の全部を見て、それでもずっと……大切にしたいって思ってる」
そう言って、國神は両腕を伸ばし、そっとの肩に手を添える。
拒まれることなく、そのまま静かに引き寄せて、やわらかく抱きしめた。
その腕の中は、とてもあたたかかった。
力強くて、でも優しくて。
逃げ場じゃなくて、"帰る場所”みたいなぬくもりだった。
何も言えなかった。
ただその胸元に顔をうずめて、
こぼれ続ける涙を止めようともしなかった。