• テキストサイズ

奪い合う光の中で【ブルーロック】

第16章 國神


涙は、なかなか止まらなかった。

誰にも見せたくなかったはずの弱さを、
いま目の前の人に見られてしまっているのに。

 

けれど、國神はなにも言わなかった。
責めることも、詮索することもせず——
ただそこにいてくれた。

 

その静けさに、は少しずつ、呼吸を整えていった。

そして、自分の手のひらを見つめながら、ぽつりと呟く。

 

「……ごめんね、國神くん……こんなとこで、泣いて……変だよね……」

 

國神は、ゆっくりと首を振った。

 

國「変じゃない。……泣きたい時に泣いていいんだ。俺だって、泣くことくらいあるし……」

その言葉が、じんと胸にしみて、また涙が溢れそうになる。

 

少しの間、静寂が流れたあと——
國神は、迷うように言葉を選びながら話し出した。

 

國「……無理に聞くつもりはないけど…もし、話したくなったときは……俺に聞かせてほしい。誰にも言えないことでも、俺はの言葉をちゃんと受け止めたいと思ってる」

その言葉に、胸がきゅっとなる。

優しい。
ただ優しいだけじゃなくて、ちゃんと“私の意思”を見てくれている。

 

は、膝の上で指を重ねながら、小さく震えた声でつぶやく。

 

「……國神くんって、ずるいね…そんなふうに言われたら……話したくなっちゃう」

 

そして、ひと呼吸置いてから、ぽつぽつと語り出す。

 

「最近、みんなが優しくしてくれるのが、すごく嬉しいのに……それを受け取っていいのか、ずっとわかんなくて……ほんとは、こうやって泣いたときに誰かにいてほしくて……優しくされたいのに……そんなの、望んじゃいけないって……思ってた」

 

声が震えて、涙がまた頬を伝う。

國神は黙って聞いていた。
何も遮らず、ただ“そこにいる”ということだけで支えてくれていた。

 

そして、の言葉は、やがて——

 

「……私なんかが、こんなふうに思っちゃいけないのに……優しくされる資格なんて、ないのに……」

 

ほんの少しだけ、言葉に詰まって。
喉の奥で、なにかがつっかえるような感覚のまま、ぽつりとこぼれた。

 

「……私なんて……もう、汚れてるのに…」

 

その瞬間だった。
/ 175ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp