第14章 潔
少しずつ、呼吸が落ち着いてくる。
熱を持っていた目元も、ようやく乾き始めて——
「……ごめんね」
ぽつりと零れたのは、謝罪だった。
自分が泣いていたこと、弱さを見せたこと、迷惑をかけてしまったこと。
何に対しての「ごめん」なのか、自分でもよくわからない。
潔「……謝ることじゃないと思うけど」
言葉は短くても、柔らかい声色だった。
拒まれてないことに、少しだけ心がほぐれる。
「……最近、いろんなこと考えちゃって…何してても、心がついてこなくて……勝手に沈んで……」
そう話しながらも、どこかで「やっぱりこんな話、重いよね」と思ってしまう。
でも、潔は一度も表情を曇らせなかった。
潔「無理して元気そうにしてるの、……前からちょっと気になってたから…こうやって話してくれる方が、俺は嬉しいかも」
は少しだけ驚いた顔をした。
自分の中では“隠せてる”と思っていたはずなのに。
でも、潔には、見えていたんだ。
「……やっぱり、全部バレてたんだね」
潔「全部じゃないけど。……でも、がずっと何か抱えてるのは、わかってた」
潔「それでもさ、俺にはが……すごく頑張ってるように見えてたよ」
その言葉に、また胸がきゅっと締めつけられる。
優しい言葉って、時々苦しくなるほど、あたたかい。
「……ねえ、潔くん」
顔を伏せたまま、問いかける。
「もしさ、私がすごく弱い人間だったら……全部、自分で壊しちゃったとしても……」
そして、小さく息を吐いた。
「……そんな私でも、受け止めてくれる人って、いるのかな」
少しだけ沈黙があって、潔が言った。
潔「……俺は、いると思う」
潔「過去がどうとか、強いとか弱いとかじゃなくて……人って、それだけで価値があるものだろ?」
その言葉に、の肩がかすかに震える。
たぶん、ほんの少し笑ったんだと思う。
でも、そのすぐあと——
「……でも、私は……もう汚れてるから」
ぽつりと零れたその言葉は、自分の耳にも届くかどうかの声だった。
それでも、潔ははっきりと、それを聞き取った。