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奪い合う光の中で【ブルーロック】

第2章 新マネ登場


凪side

練習場へ向かう途中、凪はちらりと後ろを振り返った。
誰も気づかないくらい、ほんの一瞬。

凪(……怯えてないって、言ってたけど)

口ではそう言ってた。
でも、目が全然違った。
なんていうか――あれは、“逃げられない”って顔だった。

凪(あの子、目で嘘つくの下手そう)

カートを押す手の震えも、話しかけたときの間も、全部、ちょっとズレてた。
その“ズレ”に気づけるくらいには、凪の観察眼は鋭い。

凪(……でも、頑張ってたな)

汗をぬぐって、「ありがとうございます」って笑って――
無理してるって分かってても、あの顔はちゃんと“頑張ろう”ってしてる人の顔だった。

凪(あーあ……サボりづらくなった)

ほんの少しだけ、胸の奥がざらついた。

凪(でもまあ、放っとけないのはめんどくさいし。……たまに手を貸すくらいで、いっか)

無気力な表情のまま、凪はゆっくりと歩みを進めた。







千切side

トレーニングルームに入った千切は、バンテージを巻きながらもどこか落ち着かない様子だった。

千(あの子……、だったよな)

初対面のくせに、気になって仕方ない。
最初はただの“新入りマネージャー”だと思ってたけど――
あの言葉、あの目、あの空気。全部がちょっと引っかかった。

千(なんか、無理してんだよな)

自分のことを“雑用係”みたいに言ったり、謝ってばっかりだったり。

千(……ああいうの、見てるとムカつく)

なんでだろうな、と自分でも分からない。
ただ、あんな風に自分を小さくするやつが、周りの期待を気にして空回りしてるやつが、放っておけない。

千(凪が言ってた通りだな……怯えてる)

たぶん、何かがあった。
言えないだけで、過去に。

千(でも、無理してるってことは、変わろうとしてるんだろうな)

だったら――

千(俺がちょっとくらい背中押してやっても、バチは当たらねぇか)

彼の表情に、ほんのわずかに熱が宿る。
それは、戦場以外で誰かに向けられる、彼なりの“気持ち”だった。

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