第13章 千切
フワッ…
何も言わず、そっと腕を回して抱きしめてくれた。
細くて、柔らかいのに、あたたかくて、
どこまでもやさしい抱擁だった。
千「……汚れてなんか、ない」
耳元に落ちたその言葉が、胸の奥にまっすぐ届いた。
はっきりと、迷いなく、まるで答え合わせみたいに。
千「そんなふうに自分のこと言うなよ…。俺、の全部、ちゃんと見てるつもりだから……」
千「どんな顔でも、どんな過去でも、……それでも、好きだから」
抱きしめられたまま、の肩が小さく震える。
声にならない涙が、またひとつ、彼の胸に落ちた。
千切の胸の中は、あたたかかった。
優しくて、まっすぐで、……どこまでも、安心できた。
力強いわけじゃない。
だけどこの腕は、どんな言葉よりも、「大丈夫」って伝えてくれる気がした。
は、そっと顔を上げる。
千切の胸の中で、彼の心臓の音が聞こえた気がして。
「……ありがと」
そう言うと、千切は静かに腕をほどいた。
でも、その手は離れずに、の頬に触れたままだった。