第11章 愛し方の答え

潔「……ご、ごめん、いきなり」

「ううん、助かった。ありがとう」　

小さく首を振り、そう返したけれど、まだ胸の奥がざわついている。
呼吸が浅くなっているのに、自分で気づいた。　

潔は少し黙ってから、ふっと視線を落とした。
けれど、その声はしっかりしていた。

少し焦ったような声。そのくせ、耳までほんのり赤い。
はそんな潔の様子に、思わず胸がきゅっと鳴る。


沈黙が落ちた。けれど、その静けさを破ったのは潔のほうだった。　

俯いたまま、でもしっかりとした声で。

潔「……あのさ、俺も、名前だけで呼んでもいい？」　

はきょとんとして、顔を上げる。
潔は目を逸らさずに、ちゃんとこちらを見ていた。　

「え、うん。もちろん」

潔「……」　

その一言が、まるで胸にまっすぐ飛び込んできたようだった。
濡れた髪、真っ直ぐな瞳、静かな声——全部がまっすぐで、まっすぐすぎて。
は言葉を失い、視線を外せなくなった。

（……なんで今、こんなにドキドキしてるんだろう）　

潔は、そっと笑った。　

潔(こんなのズルいって思うくらい、まっすぐな人なんだ……やっぱ俺、のこと、好きだ…)

その日から、の名前を呼ぶ声が、少しだけ特別な響きを持つようになった。