第11章 愛し方の答え
またとある日の夕方
洗濯室の隅にあるベンチに、はタオルをたたみながら小さく息を吐いた。
洗いあがった布の匂いと、乾いた空気。
ひと仕事終えた静けさに、心までほぐれる気がする。
潔「……手伝おうか?」
突然背後から声がして、は振り返る。
そこには、やや気まずそうな顔をした潔。
シャワーを終え髪も乾かさずに来たのだろう、首にかかっていたタオルには水滴が落ちていた。
潔はいつのまにか隣にしゃがみこみ、の持っていたタオルをひとつ取った。
「ありがと。でも、もうほとんど終わったよ」
そう言うと、は小さく笑って、仕上げに折り目を整えたタオルを1枚差し出した。
「はい、潔くんも、新しいタオルどうぞ」
潔がそれを受け取ると、は畳んだタオルをしまい始めた。
は、小さく背伸びをした。
備品棚の一番上——あと少しで届きそうなのに、わずかに足りない。
「……んー……っ」
かかとを上げて、腕を伸ばしたその瞬間。
ふいに、すぐ後ろから影が差す。
潔「……危ないよ」
すっと伸びた腕が、のすぐ横を通り過ぎて、目的の棚にタオルを収めた。
その指先はしっかりとしていて、無駄がない動き。
驚いて振り向くと、すぐそこに潔が立っていた。
至近距離、わずかに息が触れそうな距離。
目が合うと、は思わず声を失う。
(……ち、近……)
潔の瞳は黒く澄んでいて、まっすぐこちらを見ていた。
いつもの優しさとも違う、どこか真剣で——
見つめ返せないくらい、まっすぐだった。