第11章 愛し方の答え
あれから1週間ほど経った。
夕方、倉庫前の通路で、は片膝をついて、段ボールの仕分けをしていた。
古い備品や使わなくなった道具が積まれていて、整理するよう頼まれたが、千切が「手伝うよ」と声をかけた。
「このへん、もう使ってないってアンリさんが」
千「ああ。そっか。じゃあ、こっちに寄せていけば……」
汗ばむほどじゃないけど、動けば自然と体はあたたまっていく。
横にしゃがんでいる千切の横顔は、真剣そのもので。
整った睫毛が長くて、光が透けるたび、影が頬に落ちて。
……少しだけ、見とれてしまった。
千「……これ、まだ使えるかな?」
千切が何気なく差し出した道具に、も手を伸ばす。
その瞬間——
ふたりの指先が、ぴたりと重なった。
千「……っ!」
びくりとしたのは千切の方だった。
「ご、ごめんっ」と慌てて手を引っ込めて、目を逸らす。
けれど耳の先まで、ほんのりと赤く染まっていた。
は驚きながらも、その反応に思わず口を開く。
「……そんなに、びっくりする?」
「い、いや、だって……」千切は膝の上で手をぎゅっと握ってから、言った。
千「……の手……あったかかったから」
ぽつりと落ちたその言葉が、空気を静かに揺らす。
(……なんで、そんなこと……)
の胸が小さく鳴った。
耳の赤い千切と、目が合いそうで合わない空気の中、心臓だけがうるさく跳ねていた。
何かを言おうとしたけれど、言葉が見つからなくて。
千切も黙ったまま、下を向いて笑った。
千(……俺、のこと、好きなんだ…)
は何も返せなかったけれど、
それでも、胸の奥に灯る何かをぎゅっと抱きしめるように、
そっと微笑んで、もう一度並んで段ボールに手を伸ばした。
今度は、すこしだけ——手が触れても、千切は離さなかった。