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奪い合う光の中で【ブルーロック】

第10章 本当の居場所


早朝の共有スペースには、まだ柔らかな陽の光が差し込んでいた。

トレーニングを終えた潔が、タオルを肩にかけたまま、冷蔵庫からペットボトルを取り出す。
その隣では凪がソファに寝転び、眠たげに目をこすっていた。

凪「……あー、眠い。昨日、変な夢見た気がする」

潔「……俺も、寝た気しなかった」

そこへ、千切が静かに入ってくる。

潔「おはよう」

千「……はよ。あれから熟睡できたのかな、」

凪「國神が眠るまで見てくれたから大丈夫だとは思う……けど、今日、顔出せるかな」

その時、ゆっくりとドアが開く音がして――

國神に付き添われながら、が共有スペースに姿を現した。

一瞬、空気が止まったように感じた。
でも、誰もそれを指摘したりしなかった。
たまたま廊下で2人は会っただけなのだが。

潔が自然な顔で、にペットボトルを差し出す。

潔「おはよう。これ、スポドリ。飲む?」

「……ありがとう」

少しだけ間があったけれど、は笑った。
それは、まだ完全に力の入っていない微笑みだったけど――確かに、自分の意思で浮かべたものだった。

凪「無理はしないで。顔出してくれたのは嬉しいけど」

千切「ほんとだよ。疲れてたら、すぐ戻って休んでいいんだから」

「……ううん、大丈夫。……みんなの顔、見たかったから」

その声には、わずかに震えが混じっていたけれど、誰もそれを責めなかった。
むしろ、國神がそっと後ろから背中に手を添えて、見守るように立っていた。

凛は、と言えば――

すでに廊下の奥でトレーニングを始めていた。
声はかけなかったけれど、ちらりと一瞬だけこちらを見て、の姿を確認すると、すぐに視線を外した。



日常は、完全には戻っていなかった。
けれど、それでも確かに――昨日までとは違う、やさしい空気がそこにあった。



みんなのまなざしが、少しだけ、の方へ向いている。
でも、それは“心配”というより、“信頼”だった。
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