第10章 本当の居場所
ほんのり灯る明かりの中、共有スペースには、潔・凪・千切の3人がソファや椅子に腰を下ろし、疲れたように無言の時間を過ごしていた。
そこへ、扉がゆっくりと開く。
國神が静かに戻ってきた。
潔「……國神」
國神は頷くだけで、何も言わずにみんなのもとへと歩み寄る。
凪「……、どうだった?」
國「眠った。……泣き疲れてるみたいだったけど、ようやく、呼吸が落ち着いてた」
國神の声は静かだったが、その表情には少しだけ安堵がにじんでいた。
千「よかった……。ほんとに、今日は……全部、限界だったよな」
國「……ああ。けど、ちゃんと“言えた”んだ。自分の気持ちを。……それが何より、すごいことだと思う」
潔はテーブルの上のカップを見つめながら、ぽつりと呟く。
潔「……俺たち、ちゃんと守れたのかな」
國「……あの日、守れなかったことは変わらない。でも、今日。が“もう終わりにしたい”って言ったとき、俺たちはそばにいた。それだけで、意味はある」
凪「うん……それに、これからも、ずっと隣にいてやればいいんじゃない? 今から取り戻せばいいよ」
千「……あんなに泣いてたの、初めて見た。でも、最後にちゃんと目を見て、“終わりにして”って言った時……あれは、本当に、強かった」
國神は黙って頷いたあと、小さく息をついて椅子に座った。
國「“嫌いになりたくなかった”って言葉……俺、あれ……ほんとに胸に刺さった。あんなふうに、人を好きになれるなんて……すごいよな」
潔「……うん。黒田さんの全部が悪だったわけじゃない。けど、それでも、もう限界だったんだと思う。……怖さも、寂しさも、ずっと、ひとりで抱えてたんだ」
凪「……それをさ。今日、やっと……みんなで受け止められたってこと、じゃない?」
千「……うん。俺たち、やっと“本当の味方”になれた気がする」
國神は少しだけ目を閉じ、静かに言った。
國「……あいつが、明日また笑えますように」
誰も言葉を足さなかった。
ただ、その願いに――誰もが、そっと心の中で頷いた。
そうして、4人は夜が更けるまで、静かに同じ時間を過ごした。
彼らが心から守ろうと決めた、“たったひとりの仲間”のために。