第10章 本当の居場所
しばらくするとまた國神が話しかけた。
國「冷えると、風邪ひく。……立てるか?」
はわずかに顔を上げ、かすかに頷いた。
凪「……とりあえず、部屋に戻ろうよ。今は、少し休んだほうがいい」
潔「俺が送ろうか?」
國神が静かに首を振った。
國「俺が行く。……さっきから、ずっと背中が小さく震えてた。……今、ちゃんと支えてやれるの、俺だと思う。それに…また後悔したくない」
潔と凪は目を合わせ、小さく頷いた。
千「……お願い」
國神はの肩に手を添えながら、ゆっくりと立ち上がる。
國「行こう、天羽。もう、ひとりじゃないから」
はその言葉に、かすかに唇を噛みながら、それでも力なく立ち上がった。
國神に支えられながら、ゆっくりと歩き出す。
その後ろ姿を、潔たちは黙って見送った。
──そして、部屋に到着したあと。
がベッドに腰掛けると、國神はその隣に静かに座った。
國「……落ち着いたか?」
「……うん、ごめんね、付き合わせちゃって」
國「謝るなよ。……俺は、天羽が安心して眠れるなら、それでいい」
はそっと目を閉じ、ようやく張りつめていたものがゆるむように息を吐いた。
國神はその寝顔をしばらく見つめていると、の目から涙が一筋流れた。
國「…つらかったよな…。よく頑張ったよ」
そう言っての頭をそっと撫でた。
やがて立ち上がって毛布を上までかけ直す。
國「……おやすみ」
そう呟いて、彼は部屋をあとにした。