第9章 監獄の鍵を開く時
優人が背を向けて歩き去っていったあとも、誰もすぐには動けなかった。
ただ、がその場に崩れ落ちるように膝をつき、泣きじゃくる音だけが、冷たい廊下に響いていた。
潔「……さん、大丈夫だよ。もう……もう、大丈夫だから」
ゆっくりと膝をつき、そっと背中に手を添える潔。
そのすぐ隣で、千切が黙って肩を貸し、國神が自分の上着を脱いで優しくにかける。
凪は少し離れた位置でじっとその様子を見守り、言葉ではなく、その場にいることで寄り添っていた。
凛は壁際に立ったまま、ややそっぽを向いている。
けれどその表情は――確かに、少しだけ柔らかかった。
「……みんな、なんで……来てくれたの……?」
しぼり出すような声に、國神が静かに言った。
國「ひとりにしたくなかった。あの時、守れなかったって、後悔するのはもう嫌だったから」
千「逃げたくなる気持ち、わかる。でも……俺たちは逃げてほしくなかった」
凪「……ねぇ、今、すごく苦しいと思うけど。ここが終わりじゃなくて、やっとスタートだと思おうよ」
潔はゆっくりと微笑み、の髪をそっとなでた。
潔「これからは……俺たちがそばにいる。だから、自分を責めなくていい」
はもう、言葉を返せなかった。
でも、小さく、小さく頷いた。
まるで、初めて心から――「助けて」と言っていいと思えたように。
少しして――國神が一歩、そっと前に出る。
國「天羽」