第9章 監獄の鍵を開く時
――数時間前――
トレーニングの終わったあとの共有スペース。
薄暗い照明のもと、凪は國神と潔と並んで、静かに座っていた。
凪「……昨日の夜さ、、施設を出ようとしてた」
國「……え?」
潔「……何で、そんなことを」
凪「さぁ……偶然俺が見つけて、引き止めたんだ」
凪の口調はいつになく重かった。
凪「“邪魔しちゃいけない”“優しさに甘えちゃダメ”……そんなことばっか、言ってた」
國「……多分、黒田さんが言ったんだろうな…。その言葉が、あいつを追い詰めたんだ」
潔「……あの人、なんでそんなに平気で人を追い詰められるんだよ」
凪「うん。、たぶん今日黒田さんに別れてって言うと思う。そもそも付き合ってたのって感じだけど。もう逃げるのはやめるって言ってたし」
その時、千切がふらっと現れた。
千「なぁ……、さっき黒田さんが行った廊下の方に歩いていったんだけど……なんか、雰囲気おかしかった」
潔「っ……!」
千「なんか話しかけようとしてて、、顔引きつってた。声かけようかと思ったけど、そういう雰囲気でもなくて……」
凪「……遅いとか、関係ない。今からでも間に合うかもしれない」
國「行こう。今、止めなきゃ……もう遅い」
千「なんだよ、なんか知ってんのか?」
潔「多分…終わらせようとしてんだ。黒田さんとの関係を」
千「なっ……」
その言葉に全員が立ち上がる。
凛「……お前ら、なに勝手に騒いでんだよ」
すぐそばの壁にもたれかかっていた凛が、めんどくさそうに声をかけてきた。
潔「凛、さんが危ないかもしれない。黒田さんとふたりきりになってる」
凛「……またかよ」
潔「一緒に来てくれ。あの時、あざを見たのお前も一緒だったろ?」
凛は一瞬、目を伏せ――そして舌打ちして立ち上がる。
凛「ったく……」
潔たちはそれぞれ走り出す。
凛も口ではめんどくさそうにしながらも、潔たちと共にの元へと向かった。
誰も、もう迷っていなかった。
誰も、もう見て見ぬふりはしないと決めていた。
こうして、みんなはの元へ向かったのだ。
――今度こそ守るために。