第9章 監獄の鍵を開く時
優「終わってないよ。何も終わってない。君は俺のこと、ちゃんと分かってくれてたじゃないか。誰よりも、俺のことを……!」
肩に力が入りすぎて、服の生地がきしむ。
その手の強さに、の顔が引きつる。
優「……お願いだから。君だけは、俺を裏切らないでよ」
哀しげな目。けれど、その奥にあるのは焦りと怒り、そして狂気。
「やめて…そんな目で私を見ないで…」
優「……僕が…僕がここまで言っても裏切るの…?今までの恩を忘れて裏切るのかよ…!」
の心臓が耳元で爆音のように鳴る。足がすくみ、呼吸ができないほど胸が詰まる。
優人が手を挙げた瞬間、は身をすくめ、目を固く閉じた――
すると「ガシッ」と音を立てて、強い力が優人の腕を押さえた。
は恐る恐る目を開けた。
國神だった。険しい目で、迷いなくその手を止めている。
続けざまに、凛と凪、千切、潔が廊下の奥から駆け込んできた。
潔「さん!!」
その場に飛び込んだ5人の目が、壁に押しつけられたと、その前に立つ優人の姿を一斉に捉えた。
凛「……おい、何してんだ。お前」
優人は、まるで何事もなかったかのように、静かに手を離した。
優「……なんだよ。みんなでお出まし?」
國「ふざけるな……!」
千「、大丈夫か!?」
は、震える手で自分の腕を抱き、何も言えずに立ち尽くしていた。
凪だけが、低い声で一言、呟く。
凪「……もう、終わりにしようよ」
――この瞬間から、全てが動き始める。