第8章 甘い拘束
ある日、は、タブレット片手に選手たちのデータをまとめていた。
國神が戻ってくると、に声をかける。
國「天羽、タイムシートありがとう。助かったよ」
凪「どうも〜」
「いえ、どういたしまして」
微笑みながらタブレットを閉じたその瞬間、國神の視線がふとジャージの襟元から覗く首筋へ止まった。
國(……あれ?)
タブレットを脇に置き、じっと見つめる。
國神「……首のところ、赤くないか?」
はハッとし、髪を整えた。
「……あ、これは……ただの擦り傷で」
凪(嘘だ…キスマークじゃん…?それ)
凪「…そっか」
國(いや、違う……あれ、色、濃すぎないか…?)
國「ほんとに…」
國神が問い詰めようとすると、凪にそれ以上はやめろとでも言うように、腕を掴まれ止められた。
凪「何かあったらいつでも言っていーんだからね」
凪はポンとの頭の上に手を置くと、「行こ」と言って國神を連れ出した。
その夕方、凛と潔は共有スペースを抜けて廊下を歩いていた。
二人は小さなことで軽く言い合いをしていた。
潔「お前さ、あれどうやったのか教えろよ。」
凛「教えたってできねーだろ。」
潔「なっ…お前なぁ…」
言い争いながら歩いていると、ふと凛の目が、廊下にある棚を整理するの腕に目を奪われた。
凛「あ……?」
潔も同じ方向を見る。
潔「なっ……」
の腕には、濃い青紫色の痣が、うっすらと浮かんでいた。
凛はすぐにの方へと向かった。
潔もあとを追う。
凛「おい」
はまたビクッとしたあと振り向いた。
「…はい?あ、凛くん、潔くん」
潔「……それ、どうしたんだ?」
凛「見せてみろ。」
は2人の視線を追うと慌てて腕を隠そうとしたが、それは凛によって阻まれた。
「あ…これは、ただの打撲で……」
潔「それにしては、色が濃いし範囲も広い。放っておいて大丈夫?」
凛「本当に打っただけか?……誰かにやられたんじゃ、ないのか…?」
は俯いて口をつぐむ。
潔「もしかして…黒田さん…?」
凛「……」
二人の真剣な視線を受け、は黙り込んでしまった。