第8章 甘い拘束
千切side
共有スペースへ行くと、潔、凪、國神がテーブルを囲んで軽くクールダウンしていた。
千切はそこに遅れて合流するが、表情がどこかこわばっている。
潔「……ん? 千切、どうした? 顔、赤いぞ?」
凪「さっき走った?」
千「……いや、違う……」
一度言いかけて、口を閉じる。
でも、喉の奥に引っかかるような違和感が、消えない。
我慢できなかった。
千「……俺、さっき……ジムで、黒田さんがに……キスしてるの見た」
沈黙。
誰も、すぐには言葉を返せなかった。
その言葉に壁に背を預けていた凛もチラリと千切の方を見る。
凪「……あー……マジで?」
潔「……本気、で言ってんのか」
千「うん……しかも……なんか、すごいいい雰囲気で……の顔、見えなかったけど、まるで本当に昔からの恋人って感じで…」
國「…………」
千「……俺、すぐその場から逃げた。見なかったことにしようとした。でも……無理だった。ずっと胸がざわざわしてる」
潔「……でも、最近のさん、なんか“笑ってるようで笑ってない”っていうか……」
國「“納得したふり”みたいな顔、してたよな」
凪「……ねえ、それってさ……ほんとに“受け入れた”のかな」
誰かの呟きが、深く沈んだ空気の中で落ちる。
千「……もしあれが、本当は無理してるなら……俺、最低だよな。何もできなかった」
唇を噛みながら、拳を握る千切。
誰も、彼を責めることはできなかった。
それくらい、“確信が持てない違和感”が、今、全員の中に広がっていた。