第8章 甘い拘束
時間の流れというのは早いもので、あれから数日経った。
薄暗いジムルームに、器具の金属音が微かに響く。
は、備品の補充を終えたばかりだった。
シャワー前に少し整理をしようとタオルを畳んでいると、背後から気配が近づく。
優「……こんな時間まで、残ってたんだ」
声に驚いて振り向くと、優人がタオルを首にかけ、汗をぬぐいながら立っていた。
「あ、うん……ちょっと遅れちゃって」
優「……俺さ、最近の態度が変わったの、すごく嬉しいんだよ」
言葉とは裏腹に、どこか張りつめた雰囲気。
近づいてきた優人の指が、の顎をそっと持ち上げた。
そして当たり前のようにそっとキスを落とす。
「んっ…」
優「……でも、まだ無理してるんじゃないかって、たまに思う」
「……無理、なんかしてないよ」
優「ほんとに?」
その瞬間、ふっと顔が近づいた。
優「……だったらさ。もうその怯えた目、やめてよ」
耳元で低くささやかれたと思った瞬間、両肩を掴まれて壁に押しつけられた。
――鈍い音。
驚きで息が詰まり、壁と背中の間に衝撃が走る。押しつけるように距離を詰めた優人の目は、笑っていなかった。
優「……こうでもしないと、すぐ逃げるでしょ。俺のこと……怖い?」
「……っ、怖くない……よ」
震える声で答えると、優人はようやく力を緩めた。
優「じゃあ、いいよね……俺のこと、ちゃんと受け入れてくれるなら」
彼の手が、乱れた髪を撫でるように戻っていく。
だが、の腕には――赤く擦れたような痕が残った。