第7章 沈黙の証言
翌日、夕方。
は、洗濯当番の帰りに共有スペースを抜けて廊下を歩いていた。
その途中――ふと、角を曲がった先で、優人とばったり目が合った。
優「あ……さん」
目が合うと、優人はあくまでも自然に、微笑みながら歩み寄る。
優「今、少し……いいかな?」
そう言われ、は一瞬だけ躊躇うも、断れず、うなずいてしまう。
案内されたのは、普段ほとんど使われていない中庭に面した小部屋。
夕日が差し込む窓辺に腰かけると、優人は静かにドアを閉め、の正面に立つ。
優「昨日、ごめんね。行くって言ったのに行けなくて。……気にしてたんだ。顔色が悪そうだったから。それなのに部屋入る直前で潔くんたちに邪魔されてさ」
彼の声は相変わらず柔らかく、どこか哀しげですらある。
だが、その目だけはじっと、逃げ場のない圧を宿していた。
「どうして…どうしてここが分かったの…?」
優「なんでも分かるよ。のことなら」
の肩が、ピクリと動く。
優「まぁ、君の周りの人間関係洗い出して、そこから怪しい人の人間関係をさらに洗い出したら、帝襟さんが働くこのブルーロックが身を隠すのには1番安全かなってそう思っただけだよ」
「…」
"逃げられない"
その意識だけがを支配していく。
優「他に質問はある?なんでも答えてあげるよ」
「…トレーナーって、そんな資格持ってたの…?」
優「取ったよ。ここに入るためだけにね。俺の頭と要領の良さ知ってるでしょ?そこだけはあのクソ親父に感謝だなと思うよ」
「……っ…」
はつぐみかけた口を恐る恐る開いた。
「……ロッカー…潔くんたちのロッカーをいじったのは…優人…?」
優「え?俺、もしかして疑われてる?ひどいなぁ…」