第7章 沈黙の証言
優「でも……それで大丈夫?ブルーロックって、“少しでもサッカーから意識を逸らしたら脱落する”場所だったよね。マネージャーが女の子だからって、そんなに気にかけてて……集中、できてるの?」
その言葉に、一瞬、空気が張り詰める。
挑発というより、“核心”に触れてくる、まっすぐで穏やかな言葉。
潔は一瞬だけ視線を伏せるも、すぐに真っ直ぐ優人を見返した。
潔「……それでも、俺はさんを放っておけない。サッカーの前に、人として見てるだけです」
凪も、眠たげな目のまま口を開く。
凪「っていうか、サッカー関係ないし。あの人の顔、最近つらそうだったから。そっちこそ、トレーナーでしょ? 選手じゃないのに、そこまで入り込む必要ある?」
優人の目が、わずかに細められる。
優「……うん、確かに。僕は選手じゃない。ただのトレーナー。でも、選手が心身ともに健康であるために、メンタルケアまで気を配るのも、役割のひとつだよ。……そういうの、君たちより、少し長く見てきたつもりだから」
千「じゃあ、“支える”のと“踏み込む”のは違うってことも、知ってるはずですよね」
國「今夜は戻ってください。……これは、チームの問題です」
その言葉に、優人は短く息をつき、唇を曲げた。
優「……そうか。まさか、自分がこんなに警戒されてるとは思ってなかったよ。悲しいな。でも……君たちの熱意、ちゃんと伝わった。引き下がるよ。おやすみ」
そう言って、優人はゆっくりと背を向け、静かに歩き去る。
廊下の奥に溶けていくその背中には、微かに滲む怒り――けれどそれは、巧妙に隠されたまま。
彼が見えなくなったあと、しばらく誰も口を開けなかった。
潔「……今の、完全に“牽制”だよな。俺たちへの」
千「それでも、あんなの……が一人で抱えきれるわけない」
國「次は、もっとあからさまに来るかもしれない。……俺たちで止めるぞ」
凪「んー……眠れなくなった。めんどくさいけど、見張るか」
誰かの気配が、確かに近づいている――
そしてそれは、もはや目を逸らせないところまで来ていた。